甲状腺眼症

バセドウ病の患者さんで瞼が腫れて赤くなったり、眼の結膜が充血したり、眼球の動きが悪くなったりすることを甲状腺眼症またはバセドウ病眼症と言われています。バセドウ病の原因は、TSH受容体抗体といわれる自己免疫の異常ですが、甲状腺眼症の原因もTSH受容体抗体による自己免疫の異常であり、目の後ろの脂肪組織や筋肉が腫れる事により起こります。

 

 

甲状腺の病気の説明を行うときに、模型を使っています。

 

甲状腺眼症の治療は、軽症の場合はトリアムシロノン(炎症を抑えるステロイド)の局所注射、中等症~重症ではステロイドの注射療法(こちらは入院が必要になります)、眼科医による手術療法(眼窩減圧術)が適応になります。早期より治療を開始することが重要です。

 

また、喫煙が甲状腺眼症の回復を遅らせることが分かっています。久留米大学医療センター時代に、研究して報告しました(喫煙とバセドウ病眼症の関連. 日本体質医学会誌. 2018;80:13-21)。バセドウ病の患者さんで眼が気になる方は、禁煙をお勧めします。

 

軽症の甲状腺眼症は、セレンの多い食事で進行を遅らせることが報告されています(N Engl J Med.2011 25;365(8):769-70)。

この研究ではセレンを2日に1回100μg投与されてます。1日50μg摂取すると十分です。セレンは、日本では1日20歳以上では25~30μgの量の摂取を勧められてます。摂取が過剰になると爪の変形、脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感が起こります。 当院では、セレンが入っている食品で摂取しやすいかつお節を勧めています。1パック1.5gの鰹節が入って、5μgのセレンが入っています。少し少な目ですが、他の食品(パン、穀物、肉、魚、卵)にもセレンが入っていますので、過剰な量にならずに毎日食べても安心です。

2021年03月05日